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【進撃の巨人】片翼のきみと

第189章 鎹




「エレン。俺はお前が始祖の巨人の力を使えた瞬間、そこにはいなかった。詳しく話せ。どういう接触をして、お前に何が起きた?」



俺が問うと、エレンは思い出すような素振りも見せず、一点を見つめたまま語り出した。



「接触は、本当に手と手が触れる程度のものです。巨人化したダイナ・フリッツが俺を喰らおうと手を伸ばして来たのを、俺が殴った。ただそれだけの接触でしたが……体中を何かが駆け巡った感覚がして……何かが開いたような……。その直後、俺の意とするように無垢の巨人が動き出し、ダイナ・フリッツを攻撃しました。」



「――――………。」





王家勲章授与式でヒストリアの手に触れた時もこいつの様子はおかしかった。――――王家の血を引く者と接触すると何かが起こる。

だがそこでエレンが地鳴らしを扱えるようにならなかったのは……ヒストリアに巨人の力がなかったからか……。

だとすれば、確かにジークの言い分は筋が通っている。

そしてどうやら、あくまで鍵を開く要素が王家の血を引く巨人にあるとしても……地鳴らしを含め巨人を操る権限は始祖の巨人側にあるということだ。



――――つまりエレンが、この世の命運を……握っている……。





「俺とジークが接触すればきっと………王家の血筋でない俺でも、始祖の巨人の力を使える。――――それこそがジークの秘策。」



「――――壁内人類の命運を背負うだけでなく、全世界の命運まで握るとは……本当に大層な存在だな、てめぇは。」



「…………。」





――――しばらく妙な沈黙が流れて……次にエレンが口を開いたかと思えば、なんの関係もねぇナナの、ことだった。


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