第188章 発現
イェレナというその女は、自分達の持つ武器や装備を惜しげもなく全て俺達の前に晒して、ご丁寧に説明までしやがる。
――――余程の度胸があるのか、それとも………俺達が置かれている絶望的な状況で、自分達の提案に従うしか道はないだろうと、言いたいのか……。
各兵士の所持している小型の銃であっても、連射が可能で小さく、携帯しやすいのに威力は俺達の銃よりも上だ。
本当かどうかはさて置き、相手の兵力や規模、軍事力などは俺達とは比べ物にすらならねぇ。現物を見たこの銃一つの性能と技術だけを見ても、ここで俺達に大きな嘘をつくメリットは何もないはずだ。
――――信憑性は高いと言えるだろう。
――――だからこの自信か……と、合点がいくが、同時に信用ならねぇ奴だと感じる。
奴らが言うには、マーレは相当な軍事大国で諸外国にも敵は多い。この1年、獣や鎧が生還して俺達の情報が流れたにも関わらずパラディ島を攻めて来なかった理由は、一つは自分たちが俺達をこの島に幽閉し続けるために放った無知性の巨人――――無垢の巨人が、逆に侵攻したい今日では障害となり、手出しがしづらくなったこと。
――――そして、作り続けて来た敵、諸外国との戦争に突入し、マーレはパラディ島侵攻どころじゃなくなったというわけらしい。
そしてこの女をもっとも信用ならねぇと思ったのは、イェレナ自身が信仰し神と崇める奴が――――……獣の巨人、ジーク・イェーガーだったことだ。
その張本人ジーク・イェーガーはエレンの腹違いの兄貴で……、エルディア人を解放すべく、マーレに属したふりをしてその好機を伺っている……こいつらはその一派で……反マーレ派義勇兵と名乗った。
随分ときな臭くなってきやがった。