第16章 姉弟
「………ロイ。お願い。このあと時間をちょうだい。二人で、話したい。」
「………わかったよ。」
エルヴィン団長はいつも私の欲しい言葉をくれ、背中をそっと押してくれる。
そして……そうだ。前の私なら、それでも「兵団のためなら」「それで作戦が成功するなら」と考えてしまっただろう。
でも、何度もリヴァイさんに叱られた。
それが自己犠牲なのだと。信じて、頼っていい仲間がいる。
だから私は、もう迷わない。
「では、私は一足先に失礼するとしよう。」
ロイは思い通りに事が運ばなかったからか、眉を顰めて視線を下げたまま、エルヴィン団長の声にも反応しない。
「ナナ、しっかり弟君と話ができたら、帰っておいで。私は先に宿に帰っている。」
「はい!」
「では、失礼。」
エルヴィン団長は颯爽とその場を去った。
私は見惚れるほどのその後ろ姿を見送った。