第188章 発現
「――――捕まえた斥候にはなんとしても軍事力について口を割らせたいもんだな。それがわかれば……通信手段で嘘を流して、おびき寄せて沈めれば敵の力も削げる。」
「だからリヴァイ怖いってば。」
「――――これは戦争だ。俺達対、世界の。」
「――――………。」
あくまで様子を見て、なんとか和平にこぎつけたいとするハンジの意志は汲んでやりたい。
余計に殺さなくていいなら、その方がいいに決まってる。
――――だが、それは相手が話し合いのテーブルにつく気があるのなら、の話だ。これまでの話を総合して考える限り、俺にはどうもそうは思えねぇ。
根絶やしにしようと……俺達の絶滅を望むなら、戦うしかない。
――――エレンはおそらく………見たくもない何かを記憶から見せられて、誰よりも先に、1人その覚悟が……できているんじゃねぇかと思う。
――――殺し合う覚悟。
殺す覚悟。
殺される覚悟。
――――だからナナを遠ざけろと俺に言った。だとするのならば気持ちはわかる。どんな時でも命を救おうとして抗うあいつの目に、血にまみれた自分が映るのは――――………なかなかに削がれるんだ。
ハンジはエルヴィンに比べるとその覚悟が甘い。
なるべく死なせない、話合えば分かり合えると――――……信じている節がある。それはこいつの魅力だが……俺はあえて突き付ける。残酷な現実を。
調査兵団のこいつらの――――……この島の人間の命を預かるのには、エルヴィンほどの時に冷徹とも言える采配が必要になる日が、今後来る。
そう確信しているからだ。