第188章 発現
俺達の読み通りに、本艦から分離した小舟が一艘こちらに近付いてくる。俺達の後ろに控えていたエレンに、ハンジが指示を出す。
「――――エレン、回り込んで配置についてくれ。先遣隊を捕まえたら本艦を呼ばせる。本艦が近づいたら――――、君の出番だよ。」
「――――はい。」
エレンは何も感じないといった表情のまま、別のルートから回り込むように海岸に近付いた。上陸したいならさせてやろうじゃねぇか。本艦ごとな。
「サッシュ。」
「はい兵長。」
「念のため岩陰から班ごとに銃撃の配置。抵抗しそうなら牽制しろ。指揮を任せる。」
「はい。」
上陸した敵を包囲する。
無駄な抵抗をしねぇことを祈りたいもんだが。
「―――――通信手段を使われないようにしないとね。応援を呼ばれたら厄介だ。うーん、そうするとやっぱり……しょっぱなからお茶は無理かな。多少の脅迫はどうしても必要になるのは致し方ないか。」
物理的距離を越えて声を届けることができるという通信手段も、エレンが見た記憶の中のものをナナの知見が補ったことで俺達は理解することができた。
エレンからその話が出て来たとき、ナナは『本当に――――……あるんだ……。』と、懐かしむように、少し辛そうに目を細めていた。