第188章 発現
「ありがとうございます。」
「話せ。なんだ。」
「あ、あの……僕の祖父は、外の世界を信じている人間で……、そのツテで前にエルヴィン団長とナナさんと……話した事があって……。」
「…………。」
アルミンはエルヴィンとナナと話したことを思い出しながら、事細かにその内容を話した。
「――――それで、何が言いたい。」
「今や外の世界を禁忌とするものはありません。むしろ……どんな些細な情報であっても兵団は欲しいはずです。」
「――――ナナの持っていた書物は全て焼却した。この世には残っちゃいねぇ。」
「ナナさんの頭の中には、入っています。全て……覚えていると言っていました。」
「――――………。」
そうだ。
ナナの頭の中には、外の世界の様々なものを図解した本や辞書のようなものが丸ごと入っている。
――――それをハンジも把握していて、だからエレンの記憶を引き出す役割を、まだ調査兵団にいた頃のナナに任せた。――――エレンが知識として知らない、記憶の断片で見たようなものを、ナナが頭の中で辞書を引いてそれだと思わしきものへと変換していく。
だから今回も戦艦というものの規模や装備類をおおよそ仮定することができた。
だが、兵団にはそこまでの事は報告してねぇ。
あくまでエレンが記憶として見たものをそのまま報告していることにしている。
―――その判断は、ハンジがしたものだ。
過去、ナナは中央憲兵に外の世界の事を調べようとしている容疑をかけられた。それを蒸し返す必要もねぇし、ちょうど離団の話が出て来ていた頃だったから……兵団の都合でナナを拘束されないように、事実を伏せた。
……シャーディスに向かって、事実の隠蔽をひどく罵ったくせに、ハンジもまた……エルヴィンや俺と同じように、私情を挟んでしまうほどにナナを大切に思っているんだろう。
エレンにも誰にも言うなと口止めしていたはずだが……アルミンはナナの頭の中に何があるのか、知っていたのか。