第188章 発現
調査兵団が初めて海に辿り着いてから数か月後、木々の葉が色付きはじめる頃。
ウォール・マリアへの移住や破壊された街の整備、壁の補強等の手配が一段落する目途がつきはじめ、兵団は次に海からの外の世界による侵攻に備える構えをとった。
エレンが父親の記憶で見たものの証言に基づき、戦艦の規模などをおおよそ想定し、万が一侵攻があったなら巨人の力を使って迎え撃つ。
海側から見ればあの壁のような建造物は恰好の目隠しになる。海の側に大掛かりな兵站拠点を築き、そこは俺達の常駐場所となった。補充されていない調査兵団だけではまわるはずもなく、一時的に憲兵団や駐屯兵団からの派兵も含めた体制だった。
交代で各々の持ち場で海の向こうをひたすら警戒する。
俺は常にエレンと一緒に行動する。
――――万が一獣や鎧が船じゃねぇ手段で攻め込んできた場合、最も目指す目的はエレンやアルミンの巨人の力の奪還のはずだ。
「――――リヴァイ兵長。」
その日俺はアルミンを含む面子で見張りについていた。
「アルミン。なんだ。」
「思うところが、あって……あの……ナナさんの、ことで……。」
「――――………。」
そう言うとアルミンはチラ、と他の兵団から派兵されてきていた奴らのほうに目をやった。
「――――おい、今ここは俺とアルミンだけでいい。向こうの持ち場に移れ。」
「??は、はい。」
薔薇の紋章を背負った兵士が背を向けて俺達の元から離れると、アルミンは話し出した。