第187章 海② ※
「どんな顔をしてたっていい。その目に俺を映せよ。」
「――――………。」
ナナはしばらく俯いて目を泳がせていたが、暗がりの中ランプが灯す僅かな光が差す中で遠慮がちに俺の目を覗き込んだ。――――また違う女のような顔で。
こんなにも変化していくお前に抱くこの感情はなんだ。
ナナが少女から女になっていく時に感じたあの感情だ。大きな焦りと不安と……微かな悦び。変化していくナナの目だけはずっと変わらず昔から深く美しい海の色で……吸い込まれそうになりながら、じっと見つめ返す。
「――――いけないことなのに。」
ナナはまた目線を下げて言った。
「――――私は今……あなたと2人でいることを嬉しいって、大好きって……思ってます……、リヴァイ、さん……。」
「ああ……、俺もだ。」
――――くそ、悪いが我慢の限界だ。
俺はナナを引き寄せて唇を奪って、その場に押し倒した。ナナは驚いた顔をしていた。
「有言実行のリヴァイさん、らしくない……。」
「あ?」
「――――無理強いはしないって、言ったのに……。」
「無理強いはしない。だがお前が抱かれたいと思うように仕向けることはできる。」
「!!」
「なぁナナ。」
「――――っ……!」
その耳を食みながら低く囁くと、ナナは顔を背けた。
「言っただろうが。貞淑なフリはもういい。求めろ。」
「――――フリでも……しなくちゃ、いけないんです……!私は……。」
「しがらみなんて抜きにして……お前はどうしたい。」
「――――………。」
「ただの一人の女でしかない “ナナ” は俺を望むのか、望まないのかを聞いてる。」
――――答えろ。
お前の本心なんて、わかってんだ。