第187章 海② ※
息が上がるほどのキスをして、ナナの体を強く抱く。
――――明日も知れない中、1年という時間がどれほど長かったかお前は知らねぇだろう。
――――なにより無事で良かった。
こうしてまた会えて、ナナの体温を……合わせた唇から、繋いだ手から感じられる。
「――――リヴァイさん、連れて来てくれて……ありがとう。」
ナナは俺の肩に頭を預けて、大人しく抱きしめられたまま小さく呟いた。
「ああ。」
「――――ねぇ、リヴァイさん………。」
「なんだ。」
「――――聞かないの?」
「…………。」
「――――もし、あなたの――――……」
ナナが言いかけた言葉を言わせないように、また唇を塞ぐ。唇を放したその距離のまま、本心を伝えた。
「――――いつかそのうちわかるだろ、その時でいい。」
「――――………。」
「お前が信じるものなら、俺は信じられる。」
「――――………。」
「お前が愛するものは、俺が守ってやる。――――そう言ってるだろう。変わらねぇよ。俺は……ずっと。」
――――お前が最も愛した男を、最も愛した親友を守ってやれなかった俺が言うことでもねぇがな……と、心の内で自嘲した。この手ですべてを守りきれなくて悔やんでも……みっともなくても、お前の側でお前を守るのは、俺でありたい。
――――もうそれはずっと……あの地下街での日々から諦められない。きっとこれは、俺と言う人間のもっとも中心にある……核のようなものなんだろう。
「――――なんで……っ……、あなたは……いつも………っ……!」
ナナは顔をくしゃ、としかめて……俺の胸にとん、と頭を預けた。
「そんなことで泣かなくていい。笑ってろ。」
「――――リヴァイ、さん………、リヴァイ……さん……っ……。」
笑ってろと言っても、俺の名を何度も何度も呼びながら涙をこぼす。俺は零れる涙を舐めとって、また小さく何度も頬に、瞼に……目じりに、唇にキスをする。
この涙を拭うのもまた、俺の役目だ。
――――手のかかる女だ。
だがそれさえも……
涙の一滴までも……
――――――――愛してる。