第187章 海② ※
――――ワーナーさんは決して私を夢に縛りたかったんじゃない、責務として外の世界へ辿り着くことを課したわけじゃない。
――――だから私は自分のいるべき場所で……、大切なものを守り、微力ながら目に映る人たちの命を救いながら残りの時間を過ごしたって、いい。誰も私を責めないし……きっとそれが、あるべき姿なのだろうと思う。
――――でもまだ……私は調査兵団の一員で、自由の翼を背負っている自負がある。
心臓を捧げた身で……、もうこの身体は足手まといにしかならなくても……愛するこの人の側にいて、傷を癒すことくらいはできるんじゃないかって、僅かな可能性に縋りたがっている自分がいる。
私の涙に気付いたのだろう、リヴァイさんの手が、優しく私の髪に触れる。
何を言うわけでもなく、抱きしめるわけでもなく……私が私の中で答えを模索している間は、ただ側にいてくれる。
その優しさが、たまらなく私を締めつける。
これからこの海の先の世界とまた――――……最前線で戦うのであろうあなたに、私はなにも……してあげられない。
ひどく辛くて、もどかしくて……振り返ることもできずに、私は涙を拭った。