第16章 姉弟
「………バカげた作戦だと思いませんか、エルヴィン団長?」
「全く同感です。――――――だが、このまま壁の中で飢え、人間同士で奪い合い、殺し合い滅びていくのなら、壁を奪還するという一縷の希望に縋りたくもなるでしょうね。」
「生きるために壁の中で人間性を失っていくのか、壁の外で命を落とすことになろうとも、人間性を守るために戦うか―――――――そうですね、もし僕が選ぶ立場であっても、後者を選択するでしょう。」
ロイはふふ、と微笑を湛えたまま、食事を口に運んだ。
「さて、今日お二人を呼んだ本題に入りたいのですが。」
「ええ、どうぞ。」
「この作戦の医療に関する一切を受け持つオーウェンズ家が、どれくらいの出資をすれば、エルヴィン団長はこの作戦を意味があったものにできる、とお考えですか?」
「……………!」
私たちがこの機に聞き出し、交渉も考えていたことをロイはそのまま私たちに問うた。