第185章 空音
その次の定期診察には、ハルに迎えを頼んで……リヴァイさんの帯同を断った。
―――兵士長の執務だってある中で頻繁に何日も私情でリヴァイさんを拘束するわけにもいかないし、何より……リヴァイさんにとって辛い事実を告げられるかもしれないと思ったから。
――――案の定、私の変に優れた勘は当たった。
………ボルツマンさんから告げられた内容に、頭が真っ白になった。急変に備えて夏を目途に王都に戻り入院ということはボルツマンさんが既に決めていて……もう病院側とも、調整がなされたあとだった。何とか事情を話して僅かに時期を後ろ倒しにしてはもらったものの、離団することは回避できそうになく、言われた通りに離団する相談をハンジ団長にすることに決めた。
……でも本当は……本心は……ハンジさんの側を離れたくない。今この時期に……きっとまた起こる激動の時期に……彼女が寄りかかれる存在になりたかった。
本来予想される反応とは明らかに異なる動揺を見せた私を――――ハルは複雑な顔をして、ただずっと抱きしめてくれていた。
兵舎に戻ってから診察で分かった事実をハンジさんとリヴァイさんに伝えて離団することを相談すると――――……ハンジさんは、即答で了承して、珍しく……涙を一筋、零してくれた。ハンジさんには色々質問攻めにされるのかと身構えていたから、意外……だった。
『――――いいんだ、離れてたって私たちは仲間なんだから。それに、何よりもナナの体が大事だ。………ナナ、どうか、無事に―――――………』
そう言って、私を優しく抱きしめてくれた。
そうだ、こういう人なんだ。
いつもふざけたり茶化して場を和ませてくれるけれど、本当に触れて欲しくないところには触れない……人の心に寄りそう優しさを持った人だ。
リヴァイさんは……何も言わず、どういう反応をしていいのかわからない、と言った表情で私から目線を逸らした。