第185章 空音
『―――薬の効果が、見られない。』
ボルツマンさんから告げられたその言葉に唖然とした。
――――リヴァイさんもまた、眉をしかめて辛そうに俯いた。
――――なんで、急に……?
そう、聞きたくても……あらゆる治験を経ての投薬治療だったわけじゃないのだから、こんな風に変化する可能性だって当たり前で。
だから私はそれほどショックを受けてはいなかった。
――――そうか、ならどうしようか……くらいの気持ちでいたのだけれど、私よりもリヴァイさんが辛そうで……私の家に泊まった夜も、ずっとずっと……まるで何かに抗うように私を強く、抱きしめていた。
彼が私の耳元で消え入りそうに、『神様とやらに祈りたいと思ったのは―――……これが二度目だ。』と呟いたその声が頭から離れない。
――――リヴァイさんは私と2人で過ごす時間を、『幸せだ』と言ってくれる。
……だからそれが失われるかもしれないことに、ひどく怯えていたんだと思う。