第184章 空蝉 ※
「実はね、――――エルヴィンの心の移り変わりを……少し、知れたんです……。」
「……ああ、そういや俺も……気になってた。」
「――――私は……エルヴィンの望みを、何も………叶えてあげられなかった……。私の、我儘ばかりを受け入れさせて………。」
「――――………。」
リヴァイさんは、黙って私を背中から抱く腕に力を込めた。
「――――最後の心変わりは、エルヴィンが唯一私に向けてくれた我儘だったんです。私はそれが嬉しい……。共に生きて……死ぬ気で、いたけど……。今私は生きていて、こうして……エルヴィンのことを何度でも、瞼の裏に描ける……。エルヴィンの遺したものは、私の中に生きてるから……。だから私は……エルヴィンの分まで、世界を見に行く。――――海を越えて、自由の空を見に、行く……。」
――――私が先に死ぬんだろうと、ずっと……思っていた。
だからずっと私は、たとえ私が死んでも進み続けることを……エルヴィンに望んでた。――――愛する人を失っても進め、というのは……こんなにも辛く苦しいことだったのかと……今、やっとわかった。
「――――そこに、俺は必要か?」
リヴァイさんがぎゅ、と私の体を強く抱いて、耳元で低く囁く。
「――――必要です。一緒に行ってくれる………?ただのリヴァイさんと、ナナとして。」
振り向いてキスをねだると、甘く柔く、溢れる愛情を交わすように……唇を重ねてくれる。
「――――当たり前だ。そのために俺はここにいる。」
「――――嬉しい……。」
「――――まぁ、自由を掴み取るまでに途方もねぇ問題が山積みだがな。」
「はい……でもね、怖くない。」
「あ?」
「――――いつからだろう。リヴァイさんとエルヴィンがいてくれたら、私に怖いものなんてない。今ここにリヴァイさんがいてくれて……私の中にエルヴィンがいる。――――だから怖くない。」