第184章 空蝉 ※
「―――――幸せ、です……リヴァイ、さん……。」
狭い湯船の中で背中をリヴァイさんに預ける。
手元の泡をシャボン玉のようにふっと吹いてみると、色が次々に移りゆくその美しくて儚く消えてしまう球体に、私とリヴァイさんが映って、すぐに――――割れて消えた。
「―――――ああ、そうだな。」
「ここに、来て……良かった……。」
「――――そうか。」
「……私を連れ出して、リヴァイさんと向き合う時間をたくさん……くれて………、ありがとう……。」
リヴァイさんと向き合えただけじゃない。
リヴァイさんと向き合うために、エルヴィンの死とも向き合えた。――――死にたいとすら思って、死に場所を……死んでも赦される方法を考えていた私を叱って、その手を引いて、生きるための光を見せてくれた。
今、背に感じるあなたの鼓動が、何よりも大切で、言葉にならないほど……愛おしい。
「――――まぎれもなく下心だがな。お前が幸せだと思えるなら、それでいい。」
リヴァイさんはそう言ってまた後ろから私の首筋を食む。
「……あ、見てリヴァイさん……おっきなシャボン玉、できた……。」
「すぐ割れるだろ。」
「やだ、割らないで。――――綺麗……。ずっと、壊れないで欲しい……。」
「――――……儚いから美しいんだろう。」
「――――はい、そうですね……きっと………。」
リヴァイさんは聞き出そうとしない。
ただひたすら、私が心の内を整えてから口に出せるようになるまで、抱きしめて、温もりをくれて……待ってくれる。
――――私に応えろと迫った王都とアントヴォルの街でのあの猛攻が嘘のように、私を何よりも尊重してくれる。
だから話そうと思う。
ちゃんと……、事実全てではないけれど、この心の内を……あなたが不安にならないように。