第184章 空蝉 ※
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――――リヴァイさんがあまりに優しく、笑うから。
胸の奥がきゅん、と縮んで苦しくなって……あぁ、私はこの人が好きで仕方ないんだと……思い知る。
「――――さて、では長旅で薄汚れて帰って来た子猫を風呂に入れるとしようか。」
温かで和やかな空気になったのも束の間、リヴァイさんの目はまた色を纏ってギラリと獰猛さを含んで、私は猫というよりも窮鼠のような心地だ。
「えっ。」
「お前に拒否権はない。」
リヴァイさんは私を抱えたまま手早くバスタオルを取り出して私にバサッとかけて、下着や着替えまでテキパキと準備をする。
「えっ!だから、やだっ、です……!一人で入れます……!」
「――――なら風呂に入る前に隅々まで……奥の奥まで、掻き出して舐めて……綺麗にしてやろうか?俺はそれでも構わない。」
「……もうそれは変態の発言です……。」
「うるせぇ、片足突っ込みかけてんのはお前のせいだ。」
「開き直るんだ……。」
「本当に嫌なのならやめるが?」
「――――私がリヴァイさんに勝てないの、知ってて……ずるい……。」
小さく不満を呈すと、リヴァイさんはその色っぽい流し目で私を見てニヤリと笑う。
「――――可愛いな、ナナ。」
「…………。」
「――――離れていた分存分に愛でる。片時すら放さねぇぞ。覚悟しとけ。」
――――結局有無を言わさず私をお風呂に押し込めて………しかもランプも灯ったその場所で……一糸まとわぬ姿で身体の隅々まで視姦するように観察されながら、ふわふわに泡立てた泡を纏わせた熱い手で隅々まで洗われてしまった……。
愛しい人に全身くまなく愛でられるその興奮と快感と、お風呂の熱気に当てられながら……ぼんやりとリヴァイさんを何度も見つめた。
私が見つめる度に愛おしそうに目を細めて、耳元で小さく何度も『愛してる』と囁きながらキスをしてくれる。
一定のリズムで水しぶきをあげながら、体の最奥で心を通わせるように繋がる。
身体をぴったりと合わせて抱き合うと、体温よりも少し熱いお湯が肌と肌の僅かな隙間さえも埋めてくれて……溶け合っていくような感覚が、嬉しい。