第16章 姉弟
個室に入り、促されるままエルヴィン団長の隣に座る。
「飲み物は何になさいますか?良いワインがあるそうですよ。……もっとも私はまだお酒が飲めない歳なのですが。」
ロイはははっと笑った。
「いえ、私も遠慮させてください。……そういえば、今日はお父上……オーウェンズ氏はまだ……?」
「父は、来ません。」
「!!」
ロイの言葉に、私は驚きと共に少し安堵してしまった。
「調査兵団とのやりとりは、僕が任されています。若輩者ですのでさぞご不安にさせてしまうでしょうが、ご容赦いただきたい。」
「いえ、そうでしたか。ではこれから改めて宜しくお願いします。」
エルヴィン団長は動じることなく軽く会釈をした。
それほどまでに、お父様はロイを信用して任せている……十五歳とは到底思えない落ち着きと、自分の倍ほどの年齢のエルヴィン団長にも臆さないその饒舌さ。頭の回転の速さを伺わせる言動。
優秀な弟を誇らしいはずなのにどこか不安が渦巻いた。
やがて料理が運ばれ、会食は始まった。