第16章 姉弟
翌日、午後の訓練を早めに切り上げ、身支度を整えた私は、約束の時間にエルヴィン団長と共に兵舎を出立した。
久しぶりの王都が見えてくる。
オーウェンズとの会食に指名されたレストランは、なんとも豪華で敷居の高そうな場所だった。
兵服で、浮いてしまうかなと一瞬たじろいだが、私の前にエルヴィン団長が歩み出した。その背中は凛々しく品があって、レストランの雰囲気にも飲まれない。
私の背筋までも、少し伸びた気がした。
「お待ちしていましたよ、エルヴィン団長。」
懐かしい声がした。知的でどこか冷たい、中性的な声だ。
「お招きいただき光栄です。ロイ・オーウェンズさん。調査兵団団長、エルヴィン・スミスです。そして……」
「調査兵団のナナ・エイルです。」
「…………遠路はるばる、足を運んで頂けて光栄です。どうぞ、個室をとっていますから。」
ロイと目が合ったが、その視線はすぐに逸らされ、私たちはロイの後に続いてレストランの奥へと足を進めた。