第183章 白状
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ロイの肩を抱きながら、頭の中でエルヴィンとの時間が次々と鮮明に思い起こされる。
小さく交わした会話の一つ一つ、言葉じりすら鮮明に。
一瞬、どういう意味なのだろうと思ったエルヴィンの言動の数々……。
あれは……このことだったんだね。
――――なんて自分勝手で、酷い人。
私を欺いて、自分の子どもを身ごもらせようとしていた。
普通に考えれば最低な男。
――――なのに……嫌いになれないの。
あなたが私に望んだものを、私は満足に与えてあげられなかった。その最たるものがきっと――――……、 “妻” として、あなたの子どもを抱いて笑っていることだったんだろう。
――――リヴァイさんのことも愛してる狡い私を、戸惑いながらも受け入れて……包んで、愛してくれた。
弱いくせに共に夢を見たいと、側にいたいと言う私を尊重しながら、死ぬその瞬間まで……死さえも共に、と――――……私たちの生きる意味を全うしようとしてくれた。
―――――けれど自分が片腕を無くして……、私の病気がわかって…… “共に生きること” も、 “共に死ぬこと” も……もしかしたら叶わずに……死が二人を分かつのかもしれないと……それが現実味を帯びて来た時、あなたの気持ちは変わったのかな。
――――私を失うことに関してだけはとてもとても臆病だった、あなたらしいと今なら思える。
――――……今でもついこの間のことのように思い出す。
エルヴィンが『俺の夢を叶える日』だと言った、あの蒼天の下での幸せな時間を。あの日、確かにエルヴィンの中で何かが変わった。
心から愛していたから、わかるの。
きっとあの日、あの夜を過ごした後に――――……あなたはあのラブレターを書いた。
――――それはウォール・マリア最終奪還作戦で……自分だけが先に逝く予感、だったのかもしれない。