第183章 白状
うまく話せない。
呼吸がひくっと時折遮られて――――、気付けば古く味のある木でできたバーカウンターに、ぽた、ぽた、と滴が落ちていた。
――――そうだ、僕は確かに義兄さんが好きだった。
尊敬してた。
ずっと姉さんを一緒に守っていけるって、信じてた。
――――もう、会えない。
本当の弟みたいに思ってくれていたことも、知ってるんだ。
――――あの時、また過ちを犯していた僕にちゃんと、正しい道を教えようとしてくれた。義兄さんが僕を諭してくれたから……、僕は今こうやって、姉さんに真実を打ち明けることができている。
「――――ロイ………。」
僕の止まらない涙に姉さんはものすごく驚いた顔をして、急いでバッグからハンカチを出して……僕の涙を拭った。僕の顔を近くで心配そうに見つめる姉さんの目もまた涙が零れそうだ。
――――僕なんかよりもっとずっと悲しくて、苦しかっただろうに……姉さんは椅子から立ち上がって僕にか細い両腕を伸ばした。
少し背伸びをして、僕の肩をきゅ、っと優しく抱きしめてくれた。
「――――……ご、めん…、僕が、泣くのは……狡い………。」
「――――狡く、ないよ……。」
「――――ごめんなさい……姉さん、義兄さん……。」
「――――…………。」
いつの間にかマスターはそのカウンター内からいなくなっていて、気を利かせて2人だけにしてくれたんだろうと思う。
しばらく姉さんの腕に抱かれたまま、義兄さんを失った喪失感と、自分自身へのどうしようもない嫌悪と、こんな僕をまた何も迷わず抱きしめてくれる姉さんへの申し訳なさと大きな愛情で………みっともなくたくさん、泣いた。