第2章 変化
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こうなることを望んでいた。
あいつはここにいるべきではないと。
「おや…………エイルはどうした………?」
ワーナーの家に戻ると、机にはティーカップが三つ並んでいた。
「………地上に、返した。」
ワーナーは驚いた表情を見せたが、覚悟していたとばかりに、その言葉を受け入れた。
「……………そうか。残念だが……仕方あるまい。」
俺に日常が戻った。
暴力と欲望が渦巻き、あっけなく人間が死ぬこの地下街の日常。ただ少し変わったことと言えば、今まで目にも止まらなかったものが視界に入るようになったことだ。
敵か、無関係か。それ以外の関係があることを知った。
でなければ、あの日、道端に転がっていた赤毛のガキを拾ったりしなかっただろう。エイルより少し大きく、年は十四、五といったところか。
赤毛の痩せこけたガキはイザベルと名乗った。馬鹿だが、俺を兄貴と呼びどこへ行くにも付いてくる。全く世話が焼けるが、不思議と悪くないと思えた。
エイルが俺に言った言葉が、頭の中で何度も蘇る。
初めて言われた言葉。
その意味を理解したくて、イザベルに問いかける。
「おい、イザベル。」
「ん??」
飯を食い散らかしながら、イザベルが顔を上げる。
「………お前に、俺は必要か?」