第183章 白状
「――――どうぞ、おかけください。ナナさん、今日はどうしましょうか?」
「あ……カクテルを飲みたい気持ちはあるのですが、薬を服用しているので……アルコールではないものがなにか、あれば……。」
「――――お任せいただいても?」
「……はい!」
マスターのお任せは心がうきうきと踊る。
私が元気よく答えると、マスターもまた嬉しそうに小さく頷いて、今度はロイの方に目を向けた。
「―――君は、ナナさんの弟だったんだね。名前を聞いてもいいかな?」
「ロイです。」
「ロイ君、君はどうする?前回のものと同じ物か……、なにか希望があれば。」
ロイは少し俯いて悩んだ表情を見せたけれど、すぐにマスターをまっすぐに見て答えた。
「実は今日は姉さんにとても大切な話があるので……僕もアルコールでないものを。ちゃんと……話を終えたら……姉さんがもし僕を……赦して、くれたら……、またマスターに新しいお酒を教えて欲しいです。」
「――――そうですか。ではノンアルコールで、君の勇気が出るようなものを。」
「……はい!」
ロイもまたとても嬉しそうに笑った。
しばらくして、マスターは私の手元に細くて背の高いストンとしたくびれのないグラスに、たくさんのダイス状に切られた色とりどりのフルーツがぎゅっと詰まって、グラスの底からシュワシュワと泡が昇る飲み物を差し出した。
「わぁ……!」
「――――フルーツティーソーダです。」
「可愛い…綺麗……!素敵だね、見てロイ!」
「うん……、とっても美味しそう……。」
ロイの『美味しそう』という言葉に、マスターが反応したように見えた。そして柔らかく笑みを零してから、ロイの目の前に口が広めのタンブラーが置かれた。
それは氷と緑の葉と輪切りになったライムが青々しくグラスの中を満たしていて、弾けるような気泡とその色合いの爽やかさが気持ちを晴らしてくれるようだ。
「わぁ……!」
「――――ロイ君はミントも嫌いではなかったようなので。バージン・モヒートです。」
「ありがとう…!」
「どういたしまして。」