第183章 白状
私たちは生まれて初めて、姉弟でバーのカウンターに座って、大人の真似事でもするように……グラスを鳴らした。
これからするのは、決して楽しい話だけじゃない。
けれど……苦々しい話でも、また傷付け合ったり、お互いに自分を責めたりすることになるかもしれなくても。
――――逃げずにこうやって向き合う覚悟をお互い、してきた。それだけでも私たちにとっては、大きな一歩だと……そう思う。
「――――美味しい……!」
「うん、こっちも……すごく……美味しい、好きだな。」
それぞれがグラスに口をつけて、ふっと息を吐いてから――――……ロイが、話し出した。
「―――病状はどうなの?」
「今は一番状態がいいかも。実はね、ビタミンAにこの病気の進行を遅らせる作用が見られて……今、その薬を試しに服用してるんだけど……もう少し飲み続けてみようと思う。」
「――――………。」
ロイが一点を見つめて、制止した。
「――――ビタミンAが効くかもしれないって、なぜ……わかったの?」
「――――ロイが処方してくれた避妊薬を飲んでいる間だけ、わずかに病気の進行が遅かった。」
「――――………。」
「それと、その他の罹患者のデータを見ていたら……狩猟民族の罹患者だけが進行がとても遅くて、大事に至ってない結果があった。それが気になって色々調べてみて、ロイの処方した薬に含まれる成分と、狩猟民族特有の食物に多く含まれる成分がビタミンAだってわかった。」
「――――奇跡的だね。」
「そうだね。」
「――――気付いてたの?」
「――――気付いてないよ。」
「嘘。気付いてたから成分、調べたんでしょ?」
「――――……成分を調べてくれたのはボルツマンさんで……ビタミンAが含まれていたこと以外は、私は聞いてない。聞かなかった。ロイを信じてるから。」
ロイはグラスを持ち上げて口をつけた。
グラスを置いたその拍子に、組み上がってバランスの取れていたものが崩れて――――……氷が、グラスの中でカラン、と鳴った。