第183章 白状
研究所に着いたのは夕方、街の街灯が灯り始める頃。
そしてロイの口から、思いがけない提案が出てきて、とても驚いた。
「――――姉さんとちゃんと話したいから……、連れて行きたい場所がある。そこで話そう。」
「………うん………?」
言われるがままロイの後ろについて馬車に乗り込み、王都の中心街まで移動して……そこから街を歩く。
――――見覚えのある大通りから、通い慣れた細い路地に入れば……――――まさか……と、私はロイの服の裾を少しつまんだ。
「どうしたの?」
ロイは振り返って、首をかしげながら私と同じ色の瞳に私を映す。
「―――もしかして……バーに行く?」
「……知ってるの?」
「―――うん、嬉しい……ずっと、来たかったから……。」
私が言葉を零すと、ロイはふ、と小さく笑った。連れて来られたそこは、やっぱり……エルヴィンとよく行った、マスターのバーだ。まさかここにロイと来ることになるなんて思ってもみなくて、私は嬉しいのと、驚きとで胸が高鳴っていた。
重厚な扉を開けると、そこには変わらない凛とした老紳士―――……マスターが今日も、丹念にグラスを拭き上げていた。
扉を開けた私たちの方を見て、マスターは目を丸くして驚いた次の瞬間、まるで『待っていた』と言うように、優しい笑顔を向けてくれた。
「――――ああナナさん。会いたかったです。」
「マスター、ご無沙汰しております。」
「姉さん、ここに来たことがあるの?」
「――――うん、エルヴィンが大好きな場所で……、よく連れてきてもらったの。」
「――――そうなの……!」