第182章 泡沫②
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ナナをウォール・シーナまで見送ってからトロスト区へ戻り、俺の執務室へ向かう。
ここでは執務室兼自室だったから、服や生活に必要なものは俺達の部屋へと持ち帰ったが、執務は変わらずここで執り行うため、机や本棚の中身はそのままにしてある。
廊下を歩いていると、どかどかとでかめの足音が曲がり角の向こうから聞こえる。この足音は……クソメガネだな。
「おお?!リヴァイ、えっ、いたの?今日調整日じゃなかった?」
「――――暇だからな。クソ忙しそうな団長様の吠え面を見に来た。」
「はは!手伝うって?ありがとう、助かるよ。」
ハンジはバンバンと俺の背中を叩いて来る。
――――うぜぇほど元気に見えるが……こいつしばらく休んでねぇな。ふざけてくる度合いが大人しい。
いつものこいつなら、やれナナと部屋でどんなエロいことしてるだの、ナナの可愛いところを教えろだの、うぜぇ絡みを全力でしてくるもんだが。
「……ちっ、とりあえず急ぐものはなんだ。俺が代わる。とにかくお前は風呂に入って、今日は昼寝でもしてろ。目の下の隈がすげぇぞ。」
「えっ、ほんと?気にしてなかった。」
「――――ナナの体調ばっか気にしてねぇで、自分のことも気にかけろ。」