第182章 泡沫②
腕を引っぱって団長室に連れて行き、ハンジが抱えている執務の約半分を半ば無理矢理奪い取った。
――――ハンジは『頼りない団長で悪いね』と、いつになく弱気な言葉を発しながらも、嬉しそうに少し笑った。
資料を自室に持ち帰り、机に向かう。
ハンジのあの頭がなけりゃ難しいような案件はあいつに任せるが……武器構想の資料なんかは、俺の得意分野だ。
仕事をより分けながら着手して、3時間ほど経った頃、ある資料を調べようと、自室の本棚の引き出しを開けた。
――――そこにあった、忘れ去られたような小さな真っ白な箱が目についた。
「――――そういや、しまったままだったな……。」
その小さな箱を手に取ってみる。
が、おそらくこの出番はもうない。売るか捨てるか……何か別の物に変えるか……、あの愛想のいいオヤジなら快く応じてくれそうだ。
「――――ナナが戻ったらまた、一度顔を見にいくか……。」
またその小箱を引き出しに戻して、山のような資料と向き合いながら……ナナのいない一日を早く終えてしまおうと、団長代理の執務に没頭した。