第182章 泡沫②
「―――ほら、今度はちゃんとやれよ。」
リヴァイさんは手早く指先で混ざった殻を取り去って、何事も無かったかのような顔をする。
「――――……ずる、い……。」
「焦げる、早くしろ。」
「だから誰のせい……。」
ブツブツと不満を呈しながらも、今度は慎重に卵を割り入れる。ぷる、とした黄身も壊れることなく綺麗に、壊れて歪な模様を描いている卵の横でじゅう、と音を立てた。
「綺麗にできた!」
「――――ふ……。」
耳元でリヴァイさんが笑った気がしてまた振り向くと、本当にリヴァイさんは柔らかく笑んでいた。
「――――悪くねぇ、こういう時間も。」
「――――……はい……。」
ハンジさんと話したように……この時間も、ずっとは続かない。また調査兵団本部に戻る日も近い。本部に戻れば……この部屋には住めない。
だから今、この一瞬を、愛おしい日々を大事に過ごそうと思う。
紅茶を淹れてパンを切って、歪な卵の隣に添えた一皿の朝食をとる。
――――まずくはないけれど、ここにいる間にもう少しは、上達したいな……と思いながらチラリと向かいに座って食事をするリヴァイさんを見上げると、目が合った。
「――――次の休みは、何か作ってみるか。一緒に。」
「……はい!」
私が笑うと、リヴァイさんは僅かに口角を上げた口元に、紅茶を運んだ。