第182章 泡沫②
「――――食う。」
「御存じのとおり料理は上手くないので……美味しくなかったら、ごめんなさい。」
「――――なら口直しにお前を食うまでだ。」
「……ものすごく頑張って作ります……!」
リヴァイさんは私を腕から解放して、ごろんと仰向けになって目にかかる髪をかき上げた。
――――それだけの仕草すら、色気があって……つい見つめてしまう。
いけない、朝ごはんを作るって言ったんだった、と、慌てて身体を起こして服を着て、小さなキッチンに立つ。その様子をリヴァイさんはベッドに横たわったままじっと、見ている。
「――――なんですか、緊張するのであまり見ないでください。」
「……悪くねぇな、この眺めは。」
「何がですか?料理をしている姿が……?」
「ああ。――――初めて見る。」
「あ、そうか。」
リヴァイさんの誕生日に料理を作ったときは、こっそりと食堂で作ったから……リヴァイさんは私が料理をしているところは見たことがないんだ。
チラリと目をやると、本当にまじまじと私を見ている。
リヴァイさんは必要に迫られれば料理もすると聞いた。イザベルさんやファーランさんに作ってあげていた頃もあったと。リヴァイさんのことだ、きっと料理も上手に違いないと思うと……明らかに初心者の私が作る朝食なんて嬉しいかな、と少し不安になる。
「あ、あの……あまり、見ないで……手元が狂うので……。」
小さなかまどに木をくべて火をつけて、鉄製の小さなフライパンを温める。――――スープなんて作ってる時間はないから……卵を焼くだけだけど……それとパンに、紅茶。
こうして朝に一から調理をしてみると、兵舎で用意してもらった食事をとることが、実家でハルが食事を用意してくれていることが、どれほど有り難いことか身に染みる。