第182章 泡沫②
――――早朝に発つから……リヴァイさんは起こさないでおこうと思って、細心の注意を払って腕の中から抜け出ようと試みた――――が、到底放してはもらえず、彼は相変わらず眠ったまま私を強く引き寄せて、また腕の中に閉じ込めた。
あぁ……どうしよう。
――――離れられなくなる。この体温とこの匂いと……この肌から……。ぎゅ、とリヴァイさんに自分からしがみついて、肌を目一杯合わせる。そして愛しいその名を何度も呼んで、この腕を解いてもらうために、彼を目覚めへと誘う。
「――――リヴァイさん、リヴァイ……さん。」
「――――ん………。」
「放してください。寝てて、いいので。」
「――――嫌だ。」
「嫌じゃないです、私……行かなくちゃならないんです。」
「――――こうしてるのが、いい……。」
薄く射す朝日にすら眩しそうに目を細めて眉を不機嫌に寄せながら、私を強く抱いて甘く掠れた声で私の髪と首筋の合間に顔を埋める。
――――こんなによく眠って、目覚める事が億劫だという顔で駄々をこねるリヴァイさんが可愛くて……たまらなく、愛おしい。
でも、どうしようか……全然放してくれない。
このままにしてしまうと、私は一向に王都へ発てないし……でも、変に無理矢理逃げ出そうとすると、変な火をつけてしまいそうで……。それでなくても朝のリヴァイさんは特に………一度スイッチが入ってしまえば、断然夜よりも調子が良くて、とにかく激しいから……。
私はなんとか、別の方法でリヴァイさんを起こそうと試みる。
「――――今日はリヴァイさんも調整日だから……朝ごはん作ったら、食べてくれますか……?」
リヴァイさんがほんの少し、もぞっと動いて私に視線を向けてくれた。