第182章 泡沫②
「――――いいの?ナナは……。」
「……はい?」
「――――せっかくリヴァイと2人で過ごせる場所を見つけたのに……手放さなきゃならない。」
「――――私たちのことをご心配なら、どうぞ捨て置いて下さい。それは私情であり、調査兵団の在り方に従います。」
「リヴァイに舌打ちされるんだろうなぁ。」
ハンジさんはははっと笑って、伸びをするように天を仰いだ。
「――――ねぇナナ。」
「はい?」
「――――ナナは今、幸せ?」
ハンジさんの問に、私は穏やかな心で答えた。
「――――はい。身に余るくらいに。」
私が答えると、ハンジさんはとても安心したように柔らかく笑う。
「――――そう、それならいい。エルヴィンもきっと……ホッとしてるよ。」
「―――そうだと、嬉しいです。」
「そう言えば体調もいいから、定期診察には今回一人で帰るんだって?明日から?本当に大丈夫なの?」
リヴァイさんだけでなく、ハンジさんまで私のことを本当に心配してくれて……それが嬉しくもあり、申し訳なくもある。ただでさえ団長の執務で忙しい中、定期的に私が不在にしてしまうことが……。微力でも力になれることはあるのに……しょっちゅう王都に戻らないといけない事が憂鬱だ。
――――でもなんとなく薬が……少しずつだけど、良い方向に働いている気がして……その経過観察のためと、どうしても今回こそ―――――……ロイに、会わなきゃいけないから。
少しだけ俯いた私を、ハンジさんはじっと見つめていた。
「――――大丈夫です。すぐ戻ります。不在にして、申し訳ありません。」
「いやいいんだ。無事帰っておいでね。」
「はい。」