第182章 泡沫②
ハンジ団長は超多忙だった。
今は何よりも、外の世界からの攻撃に備えて“壁の巨人を発動させるには”と、“武器開発”に何よりも力を入れている。レイス家の地下から採掘される鉱石や氷瀑石、そういったものを駆使して日々新たな兵器の開発に余念がない。
調査兵団は、この壁の中で最も立体機動を始め“武器”を扱うことに長けている集団だ。故に、そう言った兵器開発にも携わることも多く……、その構想をハンジさんと交わすのはとても楽しい。けれど……ふと、これは人間を殺すために作ろうとしているんだなと、そう思うと……とてもやるせない気持ちになる。資料を整理しながら、その武器構想の資料から逃げるように裏を向けて伏せた。
「――――あ、ねぇナナ。あれさ、こないだの本部会議で正式に決まったから、来月の本部会議までにあれ作ってくれる?」
「はい、他兵団への転入希望者を募るための募集要項ですね。承知しました。――――編入を受け入れるのでしたら、本拠地に拠点を戻すこともお考えですか?」
私の言葉に、ハンジさんはぴた、と手を止めて天井を仰いだ。
「――――忘れてた。そりゃそうだよね。」
「はい。編入者を鍛えられるような訓練場もありませんしね……、人数的にも今はなんなく暮らせていますが、これ以上大幅に増えるとこのトロスト区支部では活動は困難ですね。」
「――――そうだな、編入希望者の人数次第……と言いたいところだけど、それを待ってお引越しは現実的じゃないな……。」
ハンジさんは頭をひねってうーん、と考えた。
「早い方がいいでしょう。調査兵団本部に戻る方向で検討しましょうか。長らく暇を与えていた職員にも戻って来てもらったり、こちらの荷物搬入等々でも時間も食いますし。」
「――――そうだね。来年の編入時期に合わせて本拠地を元の調査兵団本部に戻そう。そのつもりで進めてくれるかい?」
「任せてください!」
私がにこっと笑うと、ハンジさんは少し切なそうに眉を下げた笑みを向けた。