第181章 泡沫
「――――じゃあ、『お前の身体が冷たいから、温めてやれるように俺は温かくできてる。』って意味で言ってましたか?」
「――――……そんなこっぱずかしいことも思ってねぇ。」
「うそだ。リヴァイさん、結構ロマンチストじゃないですか。絶対こっちの意味で言ってるんだろうなって思ってました。――――でも、距離を保たなきゃいけないから……聞けなかった。」
これもナナの変化だ。
ぽつぽつと、過去の事を想い出として……話せるようになってきた。――――エルヴィンのことも時折、少しずつ想い出として話すようになった。
心も随分安定してきているように見える。
この部屋に移って、2人だけの時間を作ったことが良い方向に働いているようで俺はホッとした。
「――――お前がそう思うなら、そうなんだろう。」
「あ、ずるい。」
「うるせえ。」
「あっ、そういえばリヴァイさん。」
「なんだ。」
「再来週、定期診察に行って来ようと思うんですが。」
「――――俺も行……」
「一人で。」
「――――………。」
俺が言い切る前に遮りやがる。強い意志があるってことか。
「体調もすごくいいですし、馬でサッと行ってサッと帰ります。だからリヴァイさんはその分ハンジさんの側にいてあげてください。」
――――俺達が兵舎を出て、ハンジは少なからず寂しそうなのは事実だ。時折ナナがハンジの部屋に泊まっては、夜通し色んな話をしてはいるようだが。
エルヴィンの頃の調査兵団団長の仕事とはまた違う類の、壁の中の政治的な部分に関わる面倒な仕事が増えていたから……ナナはそこを気にしているんだろう。