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【進撃の巨人】片翼のきみと

第181章 泡沫




「――――おいアーチ、風呂行くぞ。」

「……あっ、うん………。」



兄ちゃんに促されるまま、その後をついて浴場へと向かう。



「――――お前にもわかる、そのうち。調査兵団にいりゃ、嫌程な。」

「………うん………。」



――――わかるだろうか、俺にも。

わかりたい。

……仲間を傷付けられたり、侮辱されたら自分事のように思える、そんな感覚を知りたい。



「――――とにかく俺にまず謝れ。」

「えっなんで。」

「『兄ちゃんの大事なナナさんと兵長を侮辱してすみませんでした。』ってな。」

「いやだ。」

「はあ?反省しろよお前マジで。」

「――――そんな兄ちゃん、昔ナナさんに告白して盛大にフラれたんだろ。まだナナ、ナナ、って言ってたら、リンファが怒ってもしらねーよ。」

「はぁ?!大昔のこと引っ張り出して来てんじゃねぇよ!!」



――――そのあと風呂場でも、主にハンジ団長から聞いた過去の兄ちゃんのあれこれを暴露してやると……割と本気でヘッドロックされて……、軽く失神しそうになった。

――――対人格闘術なら兄ちゃんに負けたこともなかったのに、明らかに以前より鍛えられていて俺は危機感を持った。……俺ももっと、強くならないと……、兄ちゃんの足を、引っ張らないように。



まるで昔に戻ったみたいにぎゃあぎゃあと騒ぎながら風呂に浸かっていると、後から入ってきたフロックにこっぴどく𠮟られた。………フロックは上官の兄ちゃんにも正論を極端に突き付けてブチ切れていて、こいつもまた、目立たないが実はなかなか曲者なんじゃないか?と思う。

――――まったく、面白い奴が多いけど………、疲れる。



ふとあの日、ナナさんが俺にかけた言葉が頭に蘇った。





『――――リンファが愛した調査兵団に、ようこそ。アーチさん。』





「――――………うん、確かに……、悪くない………。」





ちゃんと知ろう。

兄ちゃんがそうしてきたみたいに。

リンファがそうしてきたみたいに。

仲間の事をちゃんと。






俺は少しだけ、背筋を伸ばして前を向いた。






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