第181章 泡沫
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「――――お前はナナのことも兵長のことも知らねぇから、表面だけ見て……そう、感じたのなら仕方ねぇとも、思うけどよ……。」
「――――……。」
兄ちゃんがこんなに怒ると、思ってなかった。
でもその怒りは、言葉は……本心だと思った。
――――俺にはわからない。
仲間を尊く大切に思うその感覚も、仲間を侮辱されて怒りの感情を抱くという感覚も。
「少なくとも……自分に危害を与えようとしたお前のことも……っ……、水に流して接してくれて、それどころかお前に心を砕いて寄り添ってくれてたナナに言う物言いじゃねぇと思わねぇか……?!アーチ……!!」
「…………。」
――――そう言われて、ナナさんのことを思い返す。……確かに、最初……ナナさんを壁外調査前に誘拐して古びた教会で会話をした時に、男を悪戯に惑わせるような物言いをして……なんてふしだらで、嫌な女だと思った。……だから俺は、そんな女なら貶める作戦を当ててもいいだろうと思ったんだ。
……でもここに来て……、調査兵団でのナナさんを見ていたら……あの教会での言葉は、俺を油断させるためのものだったんだろうとすぐわかった。
――――本当は……リンファと同じで……愛する人にまっすぐに愛情を向けながら……こんな俺にも分け隔てなく接して、向き合ってくれる人だと……思ったんだ。
それなのに、エルヴィン団長が死んですぐにリヴァイ兵長の手をとってそこに都合よく身を寄せる姿に、苛立った。――――まるで裏切られたみたいな、そんな気になったんだ。