第181章 泡沫
「――――愛した女が壊れそうなほど傷ついてる姿を見たら……、手を差し伸べてやりたいと思うだろうが……!リヴァイ兵長はナナを愛し抜いてんだ……、だからまたナナが笑えるように、ああやって側にいる……!それを……軽んじるような事を言うなら、俺がお前を黙らせてやる……!」
「っなんだよ、ナナ、ナナ……兵長、兵長って……!心酔しやがって、馬鹿みたいに……!」
「――――ナナと兵長がいなかったら、今の俺はきっといない。」
「――――………。」
――――そうだ。いつもそう思う。
どちらかが欠けても駄目なんだよ。
俺にとってあの2人は……誰にも引き裂かれないなにかで繋がってる、そんな “特別なもの” に見えるんだ。
エルヴィン団長が亡くなったことにはもちろんショックだったし、この調査兵団や世界の行末に絶望感すら感じた。――――けど、今兵長がナナの手を引いて自分たちの家に帰るあの2人の後ろ姿を見ると、心底良かったって、思うんだ。
――――横暴で我儘に見えるあの人類最強の男が………実は愛する者を守り、その幸せの為には辛くても身を引いて陰に徹するような人だと知った時、俺の兵長に対する興味は倍増した。
――――望めばなんだって手に入るであろうあの男が、自分の想いを犠牲にしてもナナの想いを尊重して見守り続ける姿を見て………なんて深い愛し方なんだって、あんな風に誰かを愛せるものなのかって、衝撃を受けたと共に――――……ひどく、苦しくなった。
誰よりも強い兵長は、誰よりも仲間が死ぬところを見て来た……そしてこれからも見続けるんだ。一言も辛いとか、苦しいだとか、そんなことは臆面にも出さずに……。
兵長にだって、苦しい時があるはずで、泣きたい時があるはずで……それを曝け出しても、受け止めて包み込んで癒してくれる……そんな存在に、側にいてやって欲しくて。
――――そしてそれは、ナナ以外にいるはずがなくて。
――――お互いを埋められて、高め合えるなら……、また、傷ついたお互いの片翼を寄せ合って羽ばたけるなら。
いいじゃねぇか。
例え他の誰が何を言おうとも……俺はあの2人に共に、生きて欲しい。