第180章 蜜月 ※
執務を終えて飯を済ませてからナナと一緒にここに帰って、ナナを抱いて眠る。
ナナは高確率で意識をトばしてそのまま眠る。珍しく耐えた時も、ヤった後は足腰も立たねぇ状態で、終わった途端にぱたん、とガキみてぇに眠りに落ちる。
――――今も俺が風呂に入っている間に、寝やがった。
眠るナナの横に腰を下ろしてその髪を撫でて寝顔を見つめる。すやすやと寝息を立てる顔は、まだ幼かったエイルの面影を残していて、時計塔の上で眠るエイルを見つめていた時の――――……俺の中に何か新しい感情が芽生えたのであろう瞬間を思い出させる。
――――柔くて綺麗で、
温かくて、
小さくて、
いい匂いがして……
その大きな目に俺を映して笑う。
透明で温かい声で、俺の名を呼ぶ。
さらに厄介なことに、そのうえ俺の与えた快感に悶えて、そそる声で鳴く。
ナナはまるで存在そのものが俺のために在るんじゃないかとさえ思う。
――――………こんなものに、溺れるなと言うほうが無理だ。
――――例え他の男をその心に留めていても。
ただ指にその輝く細い髪を通しながら何度も往復させて……溢れる熱情を反芻すると、まるで心臓をその手に握られて、ナナがイく時に俺の背中にそうするように、ギッ、と爪を食い込ませたかのような……そんな痛みと息苦しさが襲う。
――――なんの確証もねぇが、おそらくこれが “切ない” という感情なんじゃねぇかと、また新しく芽吹いた感情に戸惑っていた。