第179章 巣箱 ※
「―――――………。」
「――――あははっ……!どんだけ力……、強いんですか……!」
「うるせぇ、この雑巾が弱ぇんだよ。」
「私の腕力がないんじゃなくて、リヴァイさんがありすぎなんだってわかりました?普通絞っただけで雑巾破れませんからね。………ふふっ……!おかしい……。」
「――――………。」
どうにも面白くて、久しぶりに……大きく口を開けて笑った気がする。あ、でもまずい、リヴァイさんが拗ねちゃったかもしれない、とちらりとリヴァイさんの方を見ると、想定外にとてもとても優しい顔で私を見ていた。
「――――リヴァイさん?」
リヴァイさんは黙って手をハンカチで拭って、私の頭をぽんぽんと撫でた。
「――――あぁクソ、可愛いな。」
「え。」
「とりあえずヤるか。」
「はっ……?」
「掃除はいつでもできるしな。」
「だ、駄目ですっ……!潔癖の兵士長らしく、そこは徹底して掃除から始めましょうよ……!」
「昨日は俺が書き物をしている間に誰かが寝やがったからな、おあずけ喰らってんだが?」
「………リヴァイさんが『寝てろ』って言ったんじゃないですか……。」
「本当に寝るとは思わねぇだろうが。」
「寝ますよ……団長補佐の仕事で結構疲れてたんで……。」
「――――ちっ………、終わったら覚悟しとけよ。」
「………他にも買い物とか、行かなくちゃいけないと思うんですが……。ほら、床も直したり……窓の鍵も直さないと……。」
すぐ話をそっちに持って行ってしまうから、なんとか諭そうと試みる。私が拒否の言葉ばかり並べるから、リヴァイさんが怒ってしまうかなと少し心配したけど……、思いがけずリヴァイさんは優しい表情だった。
「――――………悪くねぇな。」
「え?」
「――――いや。掃除、終わらすぞ。」
「………はい!」
また私達はあの日のように黙々と、部屋の掃除を始めた。