第179章 巣箱 ※
ふふ、と小さくナナが笑う。
普通の女はこんな部屋、意地でも嫌がると思うが……やっぱり変な女だ。しかもなんとなくナナは気に入ってしまったようだ。
――――なら、まぁ折れてやらなくもない。
「――――まぁ利点はある。」
「利点?」
「この家はこの部屋以外も空き家だ。」
「はい。」
「――――どれだけ鳴かせても、ベッドを軋ませても問題ない。」
「!!」
「――――兵舎ではできねぇあんなことやこんなこともできるな。」
「――――……っ……エロ兵長……!」
顔を赤く染めて俺を上目遣いで睨むナナの唇を、指でそっとなぞる。
「――――まだまだ取り返してねぇ。3年分のお前を俺に満たすための箱だ、ここは。」
「これからも……ですよね……?」
「――――あぁそうだな、3年分だけじゃない……これから先もずっとだ。」
「――――はい、リヴァイさん………。」
まだ心の底から笑えないナナが、切なそうな顔をしてとん、と俺の肩に頭を預けた。
その小さく柔らかな身体をそっと抱きしめて、薄暗いその部屋で微かに触れるだけのキスをする。
―――――どこか心の奥底に俺に囲われることへの罪悪感を抱きながら、それでも俺に応えることを選んだナナを後悔させない。
ただ甘く甘く、辛い事も忘れて傷を癒し合うような場所に、この薄汚く狭い巣箱を俺達の色に変えながら一緒に作っていく。
―――――それから5日後、俺達は兵舎の私室を出た。