第179章 巣箱 ※
「――――お待たせしました、リヴァイさん。」
思い描いたその声が俺を呼んで、振り返った先には私服に着替えたナナがいる。少し息を弾ませて、急いで来たんだというのが分かった。
「お?ナナ!」
「あ、サッシュさん!どうしたんですか、珍しい。リヴァイ兵士長とお茶ですか?仲良しですね。」
「おう、そうなんだよ!なんか色々こっぱずかしい話までしちまってさ!」
「誰が仲良しだ。紅茶の淹れ方を叩き込んでただけだ。」
「………あぁそれは……サッシュさんと、これからも近くで戦っていきたいってことですか?」
「――――は?」
「――――え、兵長……?」
ナナはにこにこと、当たり前のように御託を並べた。
「だってリヴァイ兵士長、どうでもいい人にわざわざ紅茶の淹れ方教えないでしょう?」
「―――こいつがありえねぇ飲み方してたから、仕方なく、だ。」
サッシュがガタッと席を立って、照れたように、だがこの上なく嬉しそうに、俺に熱苦しい熱量を向けてくる。
「ずっと近くにいますよ!!俺!!あんたが背中を――――預けられるくらいに!!」
「――――………。」
不思議とその暑苦しさも悪くねぇと思うなんて……俺も随分この馬鹿に感化されたみたいで情けねぇ。
「――――ふふっ……、素敵な師弟愛ですね。リヴァイ兵士長。」
「――――……うるせぇ。行くぞナナ、時間だ。」
「もう、素直じゃないなぁ……、じゃあサッシュさん、また。」
ナナのパタパタと後ろをついて来る足音を確かめながら、兵舎を出る。
兵舎を出てしばらく歩いてからナナの方を振り返ると、まだ自分の心の内を整理しきれていない様子で、なにやら考え込んでいるような表情だ。
俺が視線を送っていることに気付くと、ナナはパッと顔を上げて、へらっと作り笑顔を見せた。