第179章 巣箱 ※
勲章授与式のエレンとの一件以降、エレンから記憶の事を聞く時には必ず食堂だったり……なるべく人の多いところで会うようにしている。
――――それでもやっぱり、勲章授与式の前と後のエレンはまるで人が変わったようで………、何か恐ろしい、極端な思考や決意をしていないかと不安になるほどの底の見えない瞳をしている。
「――――ナナ、今日ハンジがいない分早く終われるか?」
「リヴァイ……さん。はい、終われます。」
「部屋を見に行く。」
「えっ、もう探して下さったんですか?」
「『巣箱みてぇな狭い部屋』なんておかしな希望に叶う部屋は、そもそも選択肢がねぇから探すもクソもねぇよ。」
ふん、と若干の嫌味を含めた言葉をこぼして、リヴァイさんは小さな舌打ちをした。
「………ごめんなさい……。」
「――――まぁいい。今回はちゃんと見ろよ。お前が帰る場所になるんだからな。」
「はい………。」
了承の返事を返すと、すれ違いざまにいつものようにくしゃ、と髪を撫でて……リヴァイさんは狭い廊下を、私の横を通り過ぎて行った。
リヴァイさんが部屋を早く探してくれたのは、エレンの変化を感じたからだと……思う。
実際あんな場面を見せてしまったからには、リヴァイさんがエレンの手の届かないところに私を置きたいと思うのは当然で……、私も少し……その方がいい気がして……。
今夜の部屋の内覧はちゃんと住むことを考えてみようと、思った。