第179章 巣箱 ※
勲章授与式の前後は調整日でもなく、まとまった時間もとれなかったから実家やボルツマンさんのところ、そしてロイのところには行けないままトロスト区に戻った。
調査兵団がたった13人の組織になってしまったことと、今までのように訓練の内容や装備類の管理という執務が激減し、またこのような悲惨な状態に陥り、喪に服している調査兵団の兵士長に向けて会食の誘いなどもさすがになく、今までと比較すると驚くほどリヴァイさんは“兵士長”としての執務量が減っていた。
ただし……新任分隊長に、組織幹部の基礎的な管理業務内容を教えたりという仕事は増えたのだけれど。サッシュさんに何かを教えるリヴァイ兵士長は、やっぱり口も悪いし態度も横柄だけれどどこか嬉しそうに見えるのは、私の気のせいだろうか。
ハンジ団長はむしろ忙しくて、兵団が政権を握っている以上、その中の一つの団長としてこの壁の民の今後をどうしていくのか……外敵から身を守るための術はあるのか……などなど、王都に招集されることも多かった。
私も時々は連れて行ってもらえるのだけれど、ハンジさんが『あまりに過酷な移動はさせたくない』として、私を帯同しない王都招集も少なくはなかった。
――――その分、トロスト区兵舎にいる間の資料作成や整理、エレンの話から外の世界の文明の軍事力などの推測などに力を入れた。
――――時間をかけてエレンの記憶を読み解けば読み解くほど……絶望的な状況が見えて来てしまって……何度も、筆を置きたい気持ちになった。
けれど、戦いは終わらないから。
エレンの記憶から、これまでの経緯から、何一つ見逃さずに――――……今後のことを考える糧にする。
私の洞察力と考察力は、エルヴィン団長から認めてもらったんだから……やれることを、やらなくちゃ。