第177章 勲章授与式
「………それはエレンに関係ない。大人には大人の事情があるの。」
「―――もともとは兵長の女だったのに?エルヴィン団長に鞍替えして、死んだら兵長の元に帰るのか?とんでもねぇ女だな。」
「――――そうだよ。幻滅したでしょ?」
「――――そんなに誰でもいいなら、俺でもいいはずだろ。」
「――――っ誰でもいいわけない!!私は……エルヴィンとリヴァイさんだから――――」
睫毛の触れる距離には目を閉じたエレン。
唇に歯がガチ、と当たって、ジンジンと痛む。
「ん、う!!」
キスなんてしたことないだろうエレンが、不器用に唇を押し付けてくる。そして……私が声を荒げてしまったからだ。
――――扉がガチャ、と開いて……目の端に、驚いて目を見開いて固まるリヴァイさんの姿があった。
だめ、まずい、リヴァイさんが怒っ………
そう思った時にはもう遅くて、リヴァイさんは思いきりドカッ!!とエレンの腹部を蹴り飛ばした。
「――――っっ!!」
「――――人の女に手ぇ出してんじゃねぇよ、クソガキが。」
「――――エルヴィン団長の女でしょ、ナナは。」
「――――もう俺のだ。……そんな事より何より、てめぇの只ならぬ様子に心配して付き添ったナナを押し倒して盛ってるのはクソ野郎の所業だと思わねぇか、なぁエレンよ。」
エレンは蹴り上げられた衝撃でベッドの方に倒れ込んでいたが、ふらふらとしながら立ち上がった。
「――――無防備で……いつまでも俺を男だと認識しないナナが悪いんですよ。思い知らせてやっただけです。」
「―――まぁ一理あるな。こいつの危機感のなさには同意する。」
「ちゃんと躾けてくださいよ。男を煽るようなことをすんなって。」
「てめぇもな。次ナナに手ぇ出しやがったら、両手両足削いでやる。いいよな、どうせ生えて来るんだからよ。」
「――――そう思うなら……ナナを、俺から…………調査兵団から………遠ざけてくれ……!」
エレンはリヴァイ兵士長の横を通り過ぎる時に小さく、苦しそうに呟いた。あまりに何かを思いつめたような声だったからか、リヴァイ兵士長もそれ以上何かを追及することもなく、エレンは足早に去って行った。