第177章 勲章授与式
ハンジ団長とリヴァイ兵士長も心配して様子を見に来てくれたけれど、一旦部屋には私とエレンだけで入って、見たこともないような鬼気迫る表情で息を荒げるエレンを椅子に座らせる。その側に膝をついて、エレンの顔を覗き込むようにして手を握った。
「――――エレン、どこか苦しい……?痛いの……?私に、診せてくれる……?」
「…………っ………、ナナ………。」
体の不調じゃない、きっと心が何かに押し潰されそうになってるんだ……。
何が起きたの?
そう言えば……エレンが私の隣で女王から勲章を賜って、その手の甲にキスをしたとき――――……そう、あの時からエレンは硬直して、目を見開いていた。
ヒストリアと接触した時に、なにか……思い出した……?
「話すことで楽になるなら、なんでも聞くよ……。それとも、体がどこか違和感があるなら、ベッドに横になって診察しようか?」
そう聞いた瞬間、エレンが椅子をガタッと跳ね除けて、床に膝をつく私に思い切り抱きついてきた。
「――――う、わ……っ……!」
自分より大きな身体で、しかも勢いよく抱きついてきたものだからそのまま床に倒れ込んだ。
エレンは強く強く私を抱き締めたまま、わずかに……震えている。
私は抵抗しなかった。
だってこれは、性的な興味や欲求なんかじゃなくて……まるでなにかに怯えている子供が……あの頃の小さなエレンが、助けて欲しくて起こした行動に違いなかったから。
私はエレンの背中をゆっくりとさすりながら、エレンが言葉を発するのを、ひたすら待った。