第177章 勲章授与式
勲章授与式が終わった直後、膝をついていた恰好から立ち上がった時に、私の隣にいたエレンだけが立ち上がらなかった。
「エレン……?立って……!」
小声で伝えると、エレンはようやく立ち上がったけれど……その顔はどう見ても普通じゃなくて、ひどく焦燥してだらだらと汗をかいている。
しかも……ふら、と足元もよろめいていた。
「エレン……?」
悪すぎる顔色に、小さく声をかけてみても、エレンはただ一点を見つめている。
女王が退出され、私たちも退出を促されたものの、呆然と硬直するエレンにミカサやアルミンが駆け寄った。
「エレン……?!どうしたの、大丈夫……?」
「エレン!どうしたんだ、さっきまでなんともなかったのに……。気分でも悪いの?」
アルミンとミカサを見て、ビクッと震えるようにエレンは後ずさった。そして何事かとエレンに視線を注ぐその他の調査兵団の面々に、怯えるように目線を動かしては……震えて……。唯一、私と目が合った時に、泣きそうな顔をした気がした。
私は思わずエレンに駆け寄ると、下から顔を覗き込んで首元に手を当てて脈をみる。
ひどい動悸だ。
「――――ちょっと心配だから、診ようね。おいでエレン。すみません……!どなたか、別室を……!」
私よりも背が高いはずのエレンが背中を小さく丸めて、はぁはぁと息を切らしている。腕をしっかり支えつつ背中をさすって、用意してもらった別室へとエレンを連れて行くために歩き出した。
「――――ナナ、私も……!」
ミカサが心配のあまりついて来たけど、さっきの反応を見る限り、今はエレンだけにしてあげた方が良いだろう……。
「――――診てみてから、大丈夫そうなら呼ぶね。今は少し、休ませてあげて。」
「わか……った………。」
しょんぼりと肩を落としたミカサの頭をそっと撫でて、エレンを連れて別室へ連れて行った。