第177章 勲章授与式
「もう……今から式なのに……。ぐちゃぐちゃになったじゃないですか。」
膨れながら髪を手で少し梳いて直していると、リヴァイ兵士長を尊敬の眼差しで見ていたバリスさんが私に目を向けて、長身のために上から見下ろす形で私に柔らかな表情を見せた。
「――――リヴァイ兵士長、穏やかになられましたよね。ナナさんの影響ですか。」
「えっ……、それは……どうでしょうか……。」
「――――エルヴィン団長を選ばなかったことが、あの人にとってどんな苦悩だったか想像するといたたまれず……実際少し……辛そうに見えたので………。あなたが側にいてくれて、良かった。」
「………いえ………。」
バリスさんは歳で言うと私より一つ年下で、でももちろん調査兵団歴としては先輩で。なので、どっちもが敬語で話すという不思議な感じになっている。
以前一度、『先輩なので敬語を使わないで欲しい』とお願いしたけれど彼が頑なに敬語で丁寧に相対するのは、きっと尊敬してやまないエルヴィン団長やリヴァイ兵士長の補佐官を私が担っていたからだ。
「ああそれとアーチ。いくら直接的に関係なくても、“関係ない”と言って理解しようとしないのは良くないぞ。俺達は仲間なんだからな。」
「……はい、バリスさん。」
バリスさんはとても生真面目で……西部調査の時にリヴァイ兵士長が言った言葉をちゃんと受け取って果たそうと努力する素敵な人だ。そして面倒見も良くて……あの難しいアーチさんが、バリスさんの進言をちゃんと聞いて承諾した。
……ちょっとふてぶてしさはあったけど。
「……あ、もう時間ですね。並ばないと。」
「そうだな。」
授与式では、生き残った調査兵団13人に一人ずつ自由の翼が配されたループタイが贈られ、女王陛下自らがそれぞれの兵士の首にあしらってくださった。
――――私はただ待っていただけなのに申し訳ないと思いながらも、自分の胸元で輝くループタイにエルヴィンを思い出して……少しだけ、はにかんでしまった。