第177章 勲章授与式
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――――ただならぬ雰囲気だった。
フロックさんの視線を感じてそちらに目を向けると、今にもフロックさんに殴り掛かりそうなエレンと、呆然自失という言葉が相応しく暗い目でぼんやりとするアルミン。
気まずそうに唇をかみしめるジャンやサシャ、コニー。
介入して止めた方がいいのかと思ったけれど……彼らを少し離れたところで見守るリヴァイ兵士長の姿を見つけた。兵士長が介入されない判断をしているのなら、私もそうする。
誰もかれもが仲良しで、みんなが同じ志で、寸分たがわず同じ方向を向くなんてありえないから。
――――特にあれだけの兵士が亡くなった作戦だ。
誰を生き返らせるべきか、で意見が割れたこともあって……到底、わだかまりが全くない状態なんてなくて。それぞれが……それぞれの価値観と思いと……守りたいものを持って今ここに居る。
104期のみんなの様子を遠巻きに見ていると、松葉杖をつく音の後に安心する声が私に声をかけた。
「――――お?なんか揉めてんなぁ、若者たちがよ。」
「サッシュ分隊長。そうなんです……とりあえず、見守ろうかと……思ったの、ですが……どう思われますか?」
「あぁ、いんじゃねぇのほっとけば。おい?お前は混ざらなくていいのか?アーチ。」
サッシュさんが振り返ると、その後ろには興味ない、と言った顔のアーチさんがいる。
「俺、関係ないし。」
「相変わらず可愛くねぇなぁ。俺に似ずに。」
「最後の一文は同意しかねますが……。」
「あん?ナナなんだよ。」
悪態を付くと、サッシュさんがいつものように私の頭をガシガシと乱暴に撫でる。そこに、バリスさんがそっと小声で忠告をしてくれた。
「サッシュ分隊長。リヴァイ兵士長が………睨んでますよ。」
「あっやべ。」
そう言ってサッシュさんは私の頭からパッと手を放した。