第176章 処
「――――俺も同じだ。」
リヴァイさんの頬を包んでいた手の手首をがし、と強く掴んで、私の頭を痺れさせるような目線でまっすぐに私を見た。
「…………?」
「――――お前がいればそれでいい。」
「…………。」
「お前が待つ部屋になら、帰りたいと思う。」
「――――――………。」
「お前が作る料理なら、どんなに下手くそでも美味いと思う。お前のガキなら、きっと可愛くて仕方なく感じるだろう。」
「――――それは………あの……。」
予想外の言葉に驚きを隠せず目を丸くしていたであろう私に、額をこつんと合わせて――――、至近距離で視線が交差する。
エルヴィンの蒼い瞳に私の紺色の瞳が映ると、混ざり合って――――……図鑑で見た、“海”のようだと思った。
リヴァイさんの黒い瞳に私の紺色が映ると、――――まるで夜空のようだ。
「――――調査兵団が例え無くなったとしても……、お前と一緒に帰る“俺達の居場所”が、欲しい。」
「―――――………。」
小さく掠れるような声で囁かれたそれこそが、きっとリヴァイさんの本心だと思った。
あなたにはどんな未来が見えているのだろう。
調査兵団が無くなる未来は……巨人の脅威が消え去って自由を手にすることができたから無くなった未来か。
それとも……私の憧れた外の世界から淘汰されて、支配されたから無くなった未来か………。
どちらにしてもこのまま変わらぬわけがないと、肌で感じているのか。