第176章 処
「――――エルヴィンが、私を、妻に……したいと……言ってくれていたのを、思い出して、いました……。」
「――――………。」
「――――私は、縛りたくない、縛られたくない……私が死んだら、エルヴィンには別の人を愛して欲しいと……思って……、結婚をしないと、言いました……。」
――――そう、今思えば不思議で。
私が死んだら、エルヴィンには他の人を愛して欲しいと……他の女性とであっても幸せに生きてほしいと思ったのに……、リヴァイさんにはそうは思わない。
残酷に我儘に、ずっとずっとずっと、私が死んでも……私に繋がれ続ければいいと思ってしまう。
――――そんな私は、どうかしているのだろうか。
「―――一緒に生きると決めたエルヴィンの望みを、拒否しておいて……、私だけが、リヴァイさんに囲われて……まるで、妻のように……家族のように……その空間を“愛”や“幸せ”で埋めるなんて、私にはきっとできなくて……。」
「――――………。」
「ごめんなさい、リヴァイさんは結婚とか妻にしたいとかそんなつもりはないのかもしれないのです、が……、実際に家を見ると……、どうしても、私には違和感があって………。」
くたくたになるまで、ボロボロになるまで、傷ついて戦って――――……心が折れそうなその時に、ただ抱き合えたらいい。
それだけで私は、強くなれる。
生きていける。
「――――私達だけの家なんてなくても、この関係に名前をつけられなくても、リヴァイさんがいれば、私はそれでいい………。」
「――――心底狡い女だな。」
リヴァイさんが、私の顎を指で掬って視線を捕らえる。
「――――エルヴィンも俺も、お前を縛りたくて……閉じ込めたくてたまらないのに。」
「――――狡いついでに、リヴァイさんが兵舎から出ようとする本当の理由を教えて……。」
私が懇願するように呟くと、リヴァイさんは僅かに目を開いた。そして気まずそうに目を逸らしてから……話してくれた。