第175章 思惟
「ああ、劇的ではないが進行はしていると。ただ……もしかしたら治療に役立つかもしれない成分が見つかって、それを服用し始める……そうだったな?ナナ。」
「はい、その通りです。ただ定期診察とその薬を受け取るために、また2週間に1回程度は王都に戻ることになります……大変な中、申し訳ないのですが……。」
「そうか、良かった!少しでも光が見えたなら。診察に帰るのは気にせず、ちゃんと行きな。また倒れられる方が困っちゃうからさ。」
「はい、ありがとうございます。」
私がハンジさんに頭を下げると、腕を組んだままリヴァイ兵士長がハンジさんに釘を刺すように言った。
「――――依然として体力はまだねぇからな。深夜までの雑務はさせるなよハンジ。」
「はいはい、了解!」
「今日ももう終わりだ。他に議題がないならな。」
「ああ私はないよ。サッシュは?」
「俺もないです。」
「――――じゃあ終了だ。ナナ、部屋に帰るぞ。」
リヴァイ兵士長は目でついてこい、と示して――――歩き出した。『部屋に帰れ』じゃないところに動揺するのだけど……。
それにサッシュさんが驚いたように目を丸くしていた。
あぁ、サッシュさんにもちゃんと説明しなきゃ……「俺が進言したのはしたけど、展開が早ぇよ!」とか笑われてしまいそうでちょっと嫌だ……。
「―――はい、それでは部屋に帰ります。ハンジ団長、サッシュ分隊長、おやすみなさい。」
「ああおやすみ、ナナ。」
「ゆっくり休めよ!」
リヴァイ兵士長の後ろについて廊下を歩く。
廊下の突き当りに来ると心臓がうるさく鳴る。右に行けばリヴァイさんの部屋だけれど、私の部屋は左だ。
リヴァイさんはもちろん迷うことなく右に曲がったので少しホッとした。
「ではここで。おやすみなさい、リヴァイ兵士長。」
そう、小さく笑顔を作った瞬間、振り返ったリヴァイさんが私の腕を強く引いた。