第175章 思惟
「――――私はナナの選択を責めない。私は2人のことを理解しているつもりだ。同じ変人同士ね。だから同じように理解してくれているナナに向けた、『ありがとう』だよ、さっきのはね。」
――――私が泣くのはおかしいとわかっているけど。
ハンジさんが2人のことを愛しているのと同じくらい、私のことも信じて愛してくれていることが分かって……涙をどうしても堪えられず、ぽろぽろと滴が落ちた。
エルヴィンと同じように、リヴァイさんと同じように、私に選ばせ、そして肯定してくれる。ううん、エルヴィンとリヴァイさん、ハンジさんだけじゃなかった。ミケさんも、サッシュさんもリンファも……私はこんなにも相手を尊重して大切にできる、愛に溢れた人たちと一緒にいられて、私はなんて幸せなのだろうかと思う。
「どうせまた、自分を責めてたでしょう?ナナは。得意だもんね?」
「う……っ、は、い………。」
「うわ、ひっどい顔!!私の鼻血用のティッシュ貸してあげるよ?」
「………ふふっ……。」
「――――そうだ、そうやってリヴァイの側で笑ってなよ。ナナの笑顔は何よりも私達を温かく包んでくれる。エルヴィンもそれを、望んでる。」
「――――はい………。」
「――――恐らく心の整理を出来ていないナナにリヴァイが迫ったんだろうと思うけど、責めないでやってね。私たちに、明日も平和な日が訪れるとは限らない。この平穏が終わるのは、明日……いや、もう数分後かもしれない。それを一番理解しているのはリヴァイだ。そうでなきゃ、あんなにリヴァイは強くいられないはずだから。――――常に“最期かもしれない毎日”を生きてるリヴァイにとって、ナナを一秒でも早く抱きしめたかったんだよ。」
――――やっぱりハンジさんはリヴァイさんのことまでよくわかっていて……絆の深さを感じて、心が熱くなる。
「むしろここまで“待て”してたリヴァイを私は褒めてやりたいね!」
「ふふ……、はい……。」
ハンジさんはにこやかに笑って、さて、と仕事に戻るために背を向けたのだけど、「あ。」とそう言えばという顔で再び振り返った。